気胸センター

はじめに

普段通りの生活をしている中で肺が突然パンクししぼんでしまう気胸という病気があります。多くの場合、肺の表面にブラと呼ばれる袋ができてしまい、不幸にも破裂してしまうことが原因です。気胸には、もともと肺に病気をお持ちでない若い方に発症する原発性自然気胸や、比較的高齢の方では肺気腫などがベースとなり発症する続発性自然気胸等があります。

 

放置するとどんどん息苦しくなり、生命の危険もあるため多くの人は治療が必要となります。治療の方法には胸にビニールの管(ドレーン)を入れる方法や手術があります。

原発性、続発性を総称して一般に自然気胸といわれ、呼吸器外科を専門としない一般外科などでも時に扱われる疾患です。しかしながら若い方の原発性自然気胸は受験、進学、就職など人生の節目に発症してしまう方も多いため、経験の多い専門施設でのより確実な治療が必要だと考えています。また続発性自然気胸においては原発性自然気胸と比べてブラが多発していることも少なくありません。これらをどこまで処置するかも専門施設でなければ、なかなか判断が難しいところです。更に糖尿病など様々な問題点をお持ちの方も少なくないため、治療に難渋することもあり色々な治療の選択肢があることが重要です。

当院ではこうした方々に、こだわりを持った専門的な治療を提供するために気胸センターを開設いたしました。これまで他施設で治療歴のある方もお気軽にご相談いただけたらと考えています。

当センターの治療実績および状況

  • 2015年の気胸手術症例(ドレーンと呼ばれる管を胸に入れるだけの治療は除きます)は77症例でした。県内、全国的に見ても有数の症例数だと自負しています。
  • 呼吸器外科専門医が2名常勤しています。
  • 全国学会、論文発表も積極的に行っています(当院呼吸器外科ホームページをご参照下さい)。2015年は気胸に関する全国学会発表:5件、論文発表:4件でした。

当センターの特色

治療方法は大きく分けてドレーンを胸に留置する方法と手術がありますが、患者様と十分にご相談し決定します。また胸にたまった空気は脱気する必要がありますが、当院では最新式の電動式低圧吸引器も導入しています。従来の製品と比べかなり小型化されており患者様の負担が少なくなる一方で病状を把握するための情報量も豊富となりました。

【原発性自然気胸(若い方の気胸)】
(手術による治療)
  • 基本的に1つあるいは3つの小さな傷で胸腔鏡下手術を行っています。1つの傷の手術を単孔式胸腔鏡下手術といい、20mm前後の傷で行っています(写真1、2)。術後の傷が目立ちにくいほか(呼吸器外科ホームページもご覧ください)、我々の調査では手術当日の痛みが軽いことがわかっています。
  • 原則として病気の原因であるブラを切除しますが、再発予防のため補強シートも使用しています。
(術後を快適に過ごし少しでも早くもとの日常生活に戻っていただくための当センターの取り組み)
  1. 術後の痛みを和らげるため、麻酔科の協力も得て傍脊椎ブロックという方法を行っています。他院で一般的に行われている硬膜外麻酔と比較して傍脊椎ブロックは吐き気、尿閉(術後に尿がでないこと)、血圧低下などのリスクが少なく、疼痛コントロールも同等といわれる方法です。それでも痛みが強い方は飲み薬や注射、座薬を使用し症状の緩和に努めています。
  2. 基本的に術中に尿道バルーン(手術中や術後に尿がでる管)を留置しませんので術後の不快感がなく好評です。術後3時間たち、十分に目が覚めていればICU(集中治療室)から元のお部屋に戻り、ご自身でトイレに行ってもらうことを目指しています。飲食もできるだけ早く始めてもらいます。
  3. 全体の3割の方が術後2日目に退院しています。
(胸にドレーンを入れる治療)

基本的に入院していただきます。外出の希望があり、状況が許す場合は小型の装置に交換してご用を済ましていただくことも可能です(写真3)。

【続発性自然気胸(高齢の方の気胸)】
  • ブラが多発し全て切除することが困難な場合はブラを焼灼する方法も行っています。焼灼した部分を含めて広い範囲を吸収性のシートで補強しています。
  • 体力面などから全身麻酔が難しい方に対しては、目の覚めた状態で胸腔鏡下手術も行っています(できるだけ楽に受けてもらうために、硬膜外麻酔や鎮静剤(ウトウトする薬)等で苦痛をほとんど感じないように配慮しています)。
  • 手術ではなかなか治らない方に関しては、口から気管支鏡という内視鏡を入れ、肺の内側からシリコン材料に詰める方法(気管支充填術)や胸膜癒着療法(胸の中に薬を注入する方法)も行います。
【その他の気胸】
  • 緊急性のある特発性血気胸(肺がしぼむと同時に胸の中で出血をしてしまう病気です)の場合、できるだけ早急に手術を行い救命、輸血の回避に努めています。
  • 比較的稀な月経随伴性気胸、BHD症候群などの治療経験もあります。

気胸センターホットライン

開業医、各医療施設の皆様へ気胸ホットラインのご紹介
  • 気胸患者様が発生しましたら下記にご連絡ください。可能な限り早急に対応いたします。
  • 夜間、休日に関しては原則としてスタッフが一度お話を伺ったのち、お返事いたします。

TEL:079-442-3981(呼吸器外科 坪島にお申し付けください)